狂気のお姫様
「最悪なんだけど」

「予想外に見られてるな」

「最悪なんだけど」

「うん、2回言うな。まさかここまでとは。そんなに俺がかっこいいかよ」


聞いたかお前ら。如月陽介はこんなやつなんだよ?憧れるまでもないよみんな。

やっぱり別々に来れば良かった。好奇の視線の中には明らかに嫉妬も含まれている。こりゃ早々に何かあるぞ。


「ていうか、陽ちゃんの彼女って思われるのが一番嫌」

「思ってても言うな」


いや言わせてもらうぞこれは。この変態オカンが。……なんだよ変態オカンて。変態かオカンかどっちかにしろよ。

チラリと校舎へ目を向けると、窓にも人がいっぱい。どんだけ見られるの陽ちゃん如きで。そう、まじで、陽ちゃん如きで。

「あ」

「なに」

「今鹿島杏奈見つけたわ。バッチリ見てたわ」

「無理~、怖い~」

「なんか仕掛けてきそうだな」

「半殺しでいいかな?」

「おい、それはやりすぎな。お前ちょっとぶたれただけで階段から突き落とすかんなー…」

「だって、じゃないと私の気が晴れなかったんだもん」

「程々にしとかねぇとジローさんにバレるぞ」

「それはもっと怖い。やり返せないしな。やられるだけだからなあの人の場合」


そんな話をしながら校舎へ入る。


「じゃまたなー」

「ん」


1年と2年は階が違うので途中で分かれなければならない。

ポンポン、と私の頭を撫でる陽ちゃん。あ、テメエおい、わざと周りに見せつけてんな。周囲からは悲鳴が聞こえる。


「如月さんが東堂さんの頭撫でた…」
「如月さん今笑いかけてたよね?」
「付き合ってるのか?」


色々な声が聞こえてきて、パシッと陽ちゃんの手を払い除ける。

すると息を飲む音。それもそうだろう。化け物と言われてる人の手を払っちゃったのだから。普通の人だとボコられ覚悟かもしれない。


「律~、つれねぇなー。感動の別れだろうが」

「戯言」


しかしやはり陽ちゃんなのだ。余裕のよっちゃんなのだ。

陽ちゃんはケラケラ笑いながら階段を登っていった。
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