狂気のお姫様
問題はその後だ。

陽ちゃんと離れた瞬間話しかけてこようとする奴ら。それが暴言なのか、はたまた取り入ろうとする甘い言葉なのかはさて置き、非常に面倒なのでカットである。

素早く躱して教室へ入る。が、教室へ入ってからも視線からは逃れられない。

ていうか、私先に行けって言ったし、もはや先に行こうと思ってたもん。だけど追いかけてくるんだもん。陽ちゃん足長いしすぐ私に追いつくじゃん。腕掴まれるじゃん。逃げられないじゃん。死ね。


席につくと、前の席の住人がニヤニヤしながら振り向いた。お前はほんとに……。


「お疲れ面白かったよ」

「あれは陽ちゃんのいじめ」


グテッと頭を机に預ける。


「しかも奴にも見られた」

「まじ?それはまた面白いことになったな東堂」

「心配しろよ」

「まぁでも、見られてなかったにしろ、すぐに噂は耳に入っただろうね」


それはそうかもしれないけど、だ。面倒なことは面倒だろうよ。

私は、今朝陽ちゃんと話したことを小田に話した。勿論、鹿島杏奈が屋上へ行ったことだ。小田は珍しく驚愕の顔。

「そこまでバカだったとは…」

「しかも気に入られたと思ってるかも、らしい」

「いや十中八九思ってるねあの子だったら。そもそも名前聞かれたって、なんで色恋の方に持ってくのかな。もしかしたら後でボコボコにするために名前聞いたのかもしんないじゃん」


確かにな。小田の言うことにも一理ある。まず危険だという人たちに自分の名前を名乗ろうとは思わないだろう。普通の人だったら。

どれだけ自信に満ち溢れてるのか。


「まぁでも、ほんとに羽賀さんが気に入ったっていうパターンも無きにしも非ずかもだけど」

「聞くところ可能性は0に近いね」

「はーーー、面白くなってきた。東堂あんた、何されたか逐一私に報告しなさいよ」

「心配しろ小田」


やはり私の友達は、友達らしきもの、なのだ。おい。
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