狂気のお姫様
それから『鹿島杏奈は天に認められた』などというありもしない噂が流れ始めた。鹿島杏奈は四ツ谷鳴に学校で会うと話しかけているからだ。それは、四ツ谷鳴が1人でいる時も、そして天の人がいる時もである。

それなのに何ともない鹿島杏奈は、まさに特別なのであろう。

ちなみに私はというと、あれから天とは話してないし、陽ちゃんと一緒に登校もしていない。遊ばれた女、とでも思われているようだ。まぁあながち間違いではない。陽ちゃんには遊ばれてるしな、別の意味で。


「さっき四ツ谷さんが杏奈ちゃんに挨拶返してたね!やっぱり杏奈ちゃんは特別なんだよ!」

「えぇ、特別って…。私はただ仲良くしてるだけだよぉ?」

「杏奈ちゃんみたいに可愛かったらなぁ」


休み時間ごとにこんな言葉が廊下から聞こえる。いい加減うざったい。鹿島杏奈も、わざわざ私に声をかけることはなく、こういった話を聞かせているようだ。


「今度屋上でご飯食べようと思うんだぁ」

「え!屋上行くの!?」

「うん!だって、屋上はみんなのものでしょ??それに、鳴さんも仲良くしてくれるし、大丈夫だと思うよぉ?みんなも行く?」


鹿島杏奈の言葉に、取り巻きの女達は興奮したように頷く。自分たちが何をしようとしてるか分かってるのか。

小田も呆れたようにため息をついていた。


「バカばっかりだね」

「でも、鹿島杏奈は無事かもよ?他は殴られるかもだけど」

「それもひとつの魂胆なんでしょ」


つまり、自分は天と仲良いから行っても怒られない。だから友達も連れていく。しかし友達は天に認められていないから追い出される、もしくは殴られるかもしれない。そこで『友達を殴るのはやめて』とでも言えば女神だろう。それで天が殴るのをやめたら、自分は天に意見も言えるのだということになる。

こんなところか。


「でも、四ツ谷さんも何考えてるんだろうね。それとも他のメンバーとも仲良いのかな?」

「いやー、陽ちゃんは鹿島杏奈とは話さないって言ってたからなー。ほぼ四ツ谷鳴と話してるらしいから、まず四ツ谷鳴から攻略しようとしてるんじゃない?」

「でも羽賀さんが名前聞いたんでしょ?」

「でも羽賀さんはずっと屋上にいて鹿島杏奈に会ってないらしい」

「謎だわ。どっちにしろ、そろそろ痛い目みてほしいわ鹿島杏奈」

「どうなるだろうね」


小田と雑談をしながら、時間はお昼休み。小田も私もいつもお弁当だけど、今日は小田が寝坊したらしい。購買へ行くことになった。

お昼時ということもあり、人がたくさんいるが、なんだか女子生徒が色めきたっている。

「嫌な予感がする」
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