狂気のお姫様
【side 如月 陽介】

昼休み、いつもと同じように屋上でお昼を食べる。
メンバーは決まって5人。それ以外は屋上に入って来ない、という暗黙のルール。


「今年、蓮(れん)の弟入ったよな?」

パンを頬張りながら、夕(ゆう)が蓮に話しかける。

「あぁ」

「どんなやつ?」

「蓮とは性格正反対だよ」

蓮への質問に、鳴(めい)が答える。

「つまり明るい性格なのか」

「そ」

「おいなめてんのか」

「今のは褒め言葉だぞ」

「そうか」


あ、それで納得するのね。

素直なのか、バカなのか、蓮は再びご飯に集中する。


「俺話したことないから話してみたい!」

「おー、お前ならすぐ仲良くなれるだろうな」


いつもと同じような会話、雰囲気に、目を閉じる。

4月はまだ肌寒く、パーカーが必須ではあるが、日差しが心地よい。

さて、こいつらの会話をBGMに、昼寝でもするか、と寝ようとするが、

ガチャ


それに水を差すように屋上の扉が開いた。

瞬時に全員がそちらへ目を向けて警戒する。最初に言ったように、この屋上には俺たち5人しか来ないからだ。

いや待て、全員じゃないな。

蓮よ、プリンから目を離せ。食いしん坊が。

相変わらずの蓮にため息をつきつつ、どうせまた誰か喧嘩でも売りに来たのか、と思いきや、

「わぁ!いい天気!!」

入ってきたのは、ハニーピンクのふわふわの髪の毛を靡かせた女だった。


「誰」


今まで口を閉ざしていた愁(しゅう)が威嚇した低い声を出す。

それに反応したのか、俺たちに今気づいたように女は目をまん丸にした。


「えー、と、お食事中すみません…?」

「誰って聞いてんだけど。ここに来る意味分かってんの」

「え?私はただ天気いいし…、ここでお弁当食べたくて…」


女は意味が分かっていないのか、愁の威嚇にも怯えず首を傾げる。


「ね、愁ちゃん。この子1年生じゃない?」

「みたいだな」

つまりは、屋上には立ち入らないという暗黙のルールを知らないだけなのだろう。

「でも可愛いくね?」

「鳴うるさい」

「蓮~、陽介が怖い~」

鳴に泣きつかれた蓮は、プリンを食べ終わった様子で、物悲しそうな顔で空になったプリンの入れ物を見つめている。鳴のことなんて無視である。


「あのぉ、あなたたちは誰ですか?」

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