狂気のお姫様
「いや、お前、入学って…なんでだよ、違う高校だったろ?」

「中学でやらかして、ここしか入学させてくんなかった」

「何やらかしたんだ」

「淫行教師に襲われそうになったところを返り討ちにして、服ひん剥いて全裸で屋上から吊るしたら、本来入学するはずだった高校に断られた」


私の言葉に、息を飲む陽ちゃん&その友達たち。後ろにいる2人も、話は聞こえているのか、ドン引いているのが分かる。


「……頭痛い」

「いやいや中学生に手出す先生の方が悪くない?」

「いや、分かる、分かるけど、仕返しの度がな…」

「二度と同じことしないようにトラウマ植え付けとかないとじゃん」

「…うん、そうだな」



100倍返しなんだよ、陽ちゃんや。ニコニコ笑いながら、グッと親指をたてると、ポンポンと頭を撫でられため息をつかれた。解せぬ。


「お前…あんまり問題起こすなよ。今のも……」


チラリと階段下の女を見る陽ちゃん。
大丈夫だよ生きてるよ。意識は失ってるみたいだけど。


だけど、陽ちゃんたちも全く助けようとしないし、なかなか薄情だとは思うがな。



「いや私いっつも被害者じゃん」

「そうだけど、そうじゃないっていうか…」

「だからあっちから何かしてこない限り問題は起こらないって」

「…うん」



あ、なんか諦めやがったな。



「…すごい子だね」



陽ちゃんの横で、鳴さんとやらが引き攣り笑いを浮かべる。



「…破天荒娘だからな」

「いやそれほどでも。普段は隠してるんですけどね」

「無理だろ」

「だーって、なんか知らないけどいちいち突っかかってくる人たちがいんの。これじゃ彼氏もできないわ」

「…律ちゃん彼氏ほしいの?」



質問してきたのは可愛い顔の男の子。



「高校生と言ったら彼氏じゃないですか。少女漫画みたいな恋したいし」

「少女漫画の主人公はな、人を階段から落としたりしねんだよ」

「それは彼氏には隠す!」

「無理だろ」

「解せぬ」


どこまでも冷たい陽ちゃんなんだから!


「彼氏できたら報告してね~」

「ん?はぁ……」

「律ちゃんの彼氏って律ちゃん以上のやばいやつってことでしょ?激しく気になるわ」

おいおい初対面なのに失礼だなコイツ。


「だから、普段はそんなことないんですってば」

「…まぁ普段はな」

「やられた時に少々過激にやり返すだけで」

「自覚ありか」

「やり返さないと気が済まないもん」



カラカラと笑うと、またもや顔を引き攣らせる。


「ま、ということで、高校ライフをエンジョイするから」


時計を見ると、そろそろ昼休みが終わる。こんな高校だから授業をサボる人も少なくはないが、最初が肝心。授業には出たい。


「教室戻るわ。じゃあね~」


手をヒラヒラと振ると、後ろの2人は振り返してくれないが、3人は振り返してくれた。


「律」


ふと名前を呼ばれて振り返ると、真剣な顔の陽ちゃん。


「お前なら大丈夫だとは思うが、なんかあったら言えよ」

「善処します」



悪戯っ子の笑みを浮かべて、今度こそ教室へ帰る。

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