狂気のお姫様
陽ちゃん友達いたんだね(失礼)。
いつも小言ばっかりだから絶対いないと思ってたわ。
教室へ戻ると、少しだけ視線を感じた。
あぁそっか。怖い顔した女3人に連れてかれたもんね。普通に戻ってきた私にちょっとびっくりしている様子。
「東堂(とうどう)さん、さっきのなんだったの~?」
と、チャラそうな男が声をかけてくる。誰これ、と思いながらも返事をする。
「なんか、彼氏とったでしょって言われたんだけど、そんなことしてないし、自分の勘違いだったってあっちも認めてくれたの」
認めさせたんだけどね。ははは。
変な噂になっても嫌だし、と少々詳しく話す。
クラスメイトたちも気になっていたのか、耳をすましていた。
「東堂さん可愛いし妬まれたんじゃない?大丈夫ー?」
「さぁ」
面倒になって、適当に返事をして席につくと、チャラ男くんはすんなり自分のグループに戻って「東堂さんと話したぞ」と興奮気味に語っている。
いや、聞こえてますけど。
普通に話しかけられたら普通に返しますけど。
そういう扱いするから私がまた妬まれてターゲットになるんじゃん、と思いながら教科書を出す。
はぁ、とため息をつくと、目の前の席の人が後ろへと振り返ってきた。
「で、何やらかしてきたの」
「小田(おだ)…それ私がやらかす前提?心配もしなかったくせに」
ヒソヒソと話しかけてくる女の子、小田。
私の友達。多分。
セミロングの茶髪に、眉上で揃えられた前髪。小田は美人の部類に入ると思う。
「いやだってさ。中学の話聞いたら今回もやらかすって思うでしょ」
「…」
前に、小田に、何故この高校に来たのか問われた時に中学のことを話したのだ。それから、面白いことないのか、と度々聞かれる。
そして今回、呼び出しをくらったことにより面白いことが起きたと確信しているあたりやっぱり小田ってまじで小田。普通心配するでしょ。
「まぁ…やり返したけど」
「はい詳しく」
あともう少しでチャイムが鳴る短時間で、さっき起きた出来事を話す。
小田は終始笑っていた。
いや、私の心配をしろよ。友達だよな、おい。