狂気のお姫様

第2節 想定外の告白

それにしても陽ちゃんたち。ありゃ屋上へ続く階段から降りてきたよな、と授業中ふと考える。

この城ヶ崎(じょうがさき)高校の屋上、といえば暗黙のルールがある(小田に聞いた)。

近づいてはならない、と。

なんでも、学校で一番強い人たちのたまり場になっているんだとか。もう、化け物並に強いんだとか。女でも容赦しないんだとか。

それが、陽ちゃん………。

そりゃ腕っぷしは強いと思うし、女にも割と容赦ないと思うけど、陽ちゃん。

いかん。ウケる。

屋上を悠々自適に使えるのはいいなと思う、けど

ウケる。

なんか陽ちゃんがそういう立場だっていうのがウケる。


そのまま真面目に授業をうけ、うつらうつらしている小田をシャーペンでつついて起こし、つついて起こしを繰り返しているとあっという間に放課後。

「やばい私何回寝てた」

「20回くらいはツンツンした」

「4回くらいだと思ってたわ」

「嘘だろ」


相変わらずバカだな小田は、と思いつつ鞄に荷物を放り込んで行く。

「帰りコンビニ寄ろ」

「ん」


小田には他校に彼氏がいて、たまにしか一緒に帰れない。

教室を出て他愛もない話をしていると、「東堂さん」と呼び止められた。

声をした方を向くと、ちょっと爽やかめの男の子。他のクラスの子かな。

「なに?」

「東堂さんって彼氏いる?」

「いないけど」

「じゃあ俺と付き合わない?」

「いやまず誰」

「ぶふっ」


今ふいたのは小田だ。果てしなく小田である。

「あ、ごめん、俺隣のクラスの浅田」

「ごめんなさい」


間髪入れずに、綺麗なお辞儀で断ると、

「ぶふっ」

またしてもふいたのは小田だ。


「なんで?」

しかし諦めないのが浅田という男らしい。

「いや、そんな初対面の人にいきなり付き合ってって言われても、私あなたのこと好きじゃないし」

「正論だな」

小田よ小田。茶々を入れるな。


「一目惚れしたんだ。付き合ってみてから好きになってよ」

「お、それもそうだぞ東堂」

「小田うるさい」


小田をジトッと睨むも、反省した様子は皆無。毛ほども見られない。

とりあえずもう一回断ろう、と浅田くんとやらを見据える、と


「ちょっと!!!」

と甲高い女の声がした。
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