残念先輩って思われてますよ?
先輩、カッコいいって思われてますよ?
「ねえねぇ、一番右の人、かっこよくない?」
「うーん……」
四月一日──関東某所にある会社の入社式が終わると、すぐにオリエンテーションに移る。
今年、大学や専門学校を卒業したばかりの新入社員である私達の前に入社してまだ五年以内の先輩社員が向かい側に並んでいる。
不動産業を扱うこの会社では、どこの部署にされるにせよ、まず始めに営業職を一か月と少し経験を積んでからそれぞれの部署に配属されていくのが慣習となっているそうで、目の前にいる先輩社員たちはそんな私達に一対一で教えてくれるために選ばれた人達だった。
私の隣に座っている今日初めて会った同期の逢沢愛未は小さい声でそっと耳打ちしてきた。
向かって一番右側──椅子をやや後ろに引いて、ミーティングルームのパネル側の上司の話に耳を傾けている。
まあ、確かに世間一般でいうところのイケメンってヤツだろう。下手したら「男性アイドルやっています」と言われてもそこまで、驚かないかもしれない。
でも、他の先輩方と違って、どことなく表情が暗い気がする。先輩方は五人とも男性で、向かいに座っている私達、新入社員も男性三名に私と逢沢さんの女性二名の五名で、話を聞いているとどうやら向かいの先輩達とそれぞれ一週間ずつ、バディを組んで、仕事を教わりながら肌で直に学ぶということをするそうだった。
この日はこれで終わりだった。
明日に備えて、真っすぐ家に帰ろうと廊下を出ると逢沢さんが私に声を掛けてくる。
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