残念先輩って思われてますよ?
「ふぅぅぅん、そうなんだぁ……」
逢沢さんはじぃーっと私を真顔で見つめ、少し考え事をしていたがすぐにいつもの明るい取り繕った笑顔に戻る。
「まあ、私にダメ出しされた男で良かったら璃子が貰ってもいいけど……、あんな奴よりもっといい男はいっぱいいるけどね~」
もう、何からツッコんでいいのかわからない。まず「私が捨てた」的な発言。そして私のことを自分より格下だと暗に語っている言葉。それでもなお自分の狙った元獲物を取られたくないという意地の悪さが見え隠れする……。あれ? 私、なんでこの人と一緒にご飯食べてるんだろう?
注文していたパスタとサラダが私達のテーブルに到着し、サラダを取分けて食事に取り掛かる。
ご飯を食べている間はさすがの逢沢さんでも気分が良いのか、私が苦手としている恋バナに触れずに、別の当たり障りのないインスタ映えのするお店の話とか明日の天気など話題が出ては次々と消化して話が移り変わっていく。
「璃子も大変だね。来週……せいぜいぶち切れされないように気をつけてね~」
二人とも食事を終えたところで、そろそろこのレストランの閉店時間も近づきあんなに混んでいたお客さんの数も大分減ってきている。
会計を互いに済ませて、お店を出てエスカレーターで降っている途中に逢沢さんが、またも廣田先輩の話を切り出してきた。
うーん、確かにそれは怖い……私は逢沢さんより気が回らない……きっとたくさん怒られてしまいそう……でも。
それは怒ってるのかな? 叱ってるのかも……。
そんな疑問が頭によぎりながら、逢沢さんと改札口の前で別れて帰りの電車へと向かった。