残念先輩って思われてますよ?
「書面上は特に問題ないように見えるでしょう。しかし……」
廣田先輩は、そこで一旦、言葉と視線を切り、書類を外山さん側に向けてある頁が読めるように前に差し出す。
「この書類は更新日が半年も前のものです。半年もあれば周辺の状況や物件自体の状態も変わっているかもしれません。なにより私はこの物件にはまだ行ってないのですぐにおススメはできません」
廣田先輩がそう答えると、それまで眉を曇らせていた外山さんの顔が満悦の表情をこぼし始める。
「ふむ、さすがだな……、お前のようにしっかりした若者が少なくなって久しいが、実に優秀だ……だが、会社ではあまり評価されてないだろう?」
確かに……廣田先輩って、日々の売り上げが常に上位にいるのに、上司に褒められているのを見たことがない。
「上司に媚びを売るヤツばかりが評価される会社なんて息苦しくはないか?」
外山さんの投げかけに廣田先輩は黙って話しを聞く。
「お嬢さん、前回も別のものと一緒に来たね。新人さんかな?」
いきなり私に急に話が振ってきた。
私は「はひっ」っと変な返事をしてしまい、外山さんの笑いを誘ってしまった。
「ははっ、前回は君には悪いことをした……誤っておこう。でもこれだけは言っておこうか、見習うべき相手はちゃんと見定めることだ」
その言葉は私は思い当たる節はある。「はい」と答えながら、こくりと顎を引く。