残念先輩って思われてますよ?

「すまんが、少しだけ部屋の前で待っててくれないかね?」


 外山さんにそう言われたので、私は「失礼します」と席を立ち、廊下に出た。


「あら? どうなさいましたか? 今、お飲み物をご用意したのですが?」


 廊下に立って待機していると、部屋に案内してくれた使用人の女性がトレンチにティーポッドとカップをのせたものを手に持った状態で私に声を掛けてきた。

 私は簡単に事情を説明すると、使用人の女性は「そうですか」と言い、そのまま中に入らず、引き返していった。

 どういうことだろう……立ち入った話をしているということなの?

 状況が呑み込めないまま、待つこと五分、ガチャリと扉が開き廣田先輩が出てきて、振り返りもう一度挨拶をするので私も慌てて追従し頭を下げる。

 屋敷を出て、廣田先輩に二人で何を話していたのか質問すると「ん? ああ『引き抜き』だよ、外山さんの会社に転職しないかって誘われた」

 私はそう聞くと、それでどうするんですか? と質問した。

< 20 / 55 >

この作品をシェア

pagetop