残念先輩って思われてますよ?
「宗方ちゃん、今週、廣田なんだって、ご愁傷様~」
やっぱりか~、突然の男性トークに変わると、これまで明るく天使のように見えた先輩達が鬼のように見えてくる。
だいたいのことは、水に流して忘れてくれる……、グレーはグレーのままだっていいと考えてくれるが、こと異性に関係する話だけは「白」か「黒」かをはっきりとつけたがる。男性と真逆の思考回路が女性の頭には組み込まれて(プログラミング)いる。
「はい、そうなんです、色々と学ばせてもらっています」と、仕事面のことを話して、話を逸らそうと試みるが、そんな私の業など海千山千の先輩方から見ると児戯に等しいのだろう──「で? 廣田のことどうなの?」と、すぐに話を戻されてしまった。
「いやー、廣田先輩はとても真面目で、ちゃんと叱るときは叱ってくれて……あと団子を奢ってくれました」
私は自分の知り得る限りのことを話すと女性先輩達の間に動揺が走る。
「なんだ、と……廣田が女に何か奢るなんて初めて聞いた……」
「これはまさかの……」
え? まさかの……何ですか? 先輩達は言葉を続けず違う話にいきなり変えてしまった。ちょっと人に話をさせるだけ話させて放置ってひどすぎやしません?
午後の始業のチャイムが鳴る十分前くらいに先輩達はいそいそと午後の準備のためにミーティングルームを後にしていくが、最後のひとりが私に向かって声を掛けてきた。
「宗方ちゃん今の話は、しばらくは逢沢ちゃんにしない方がいいよ」
そう言うとその先輩は「じゃあね」と言ってミーティングルームを後にし、私一人ポツンと取り残された。
先輩の最後の言葉ってどういう意味だろう?