残念先輩って思われてますよ?
「にゃ~~~~~」
目が合って第一声、ロングトーンでの挨拶。
「フクちゃん、私を出してくれるかな~?」
玄関のドアを見ると、二匹飼っているうちの雄猫の甘えん坊が「構ってくれないと、ここを通さないぜっ?」と横座りしてこちらに足を向けている。先ほどの長い鳴き声はこの子の場合はお腹が空いたか「僕にかまって」のどちらかで今回は後者。
ふっふっふっ、残念でした。フクちゃん──この家のドアは外開き。君がそこに居座っても私は外に出ることができるのさっ。
「ごめんね、夜いっぱい一緒に遊ぼうね~」
私は軽くフクちゃんの鼻の前に手を差し出すと、頭を軽く擦りつけてくる。
少しだけヨシヨシして、時間も無いのでドアを開きながら愛猫を跨いで外に出る。
自宅から最寄りの駅は十五分、会社へは乗り換えなしで、まっすぐ三十分、電車の中は少し混んでいて出入り口の角をキープしスマホを操作し、ニュース等の時事情報を頭に入れる。
途中、大きな駅で、ごっそりと人が入れ替わりがあり、私はすかさず動き中ほどの空いている席に座ることができた。
ふぅーよかった……。ん? ひゃっ!
驚いた。すぐ隣に廣田先輩が座っていた。
私のリアクションに先輩は「シィーーッ!」と人差し指を口に当てる。