残念先輩って思われてますよ?
「おはようございます」
「うん、おはよう」
「えっと……」
どうしよう。何を話していいのかがわからない……。
私が沈黙モードに入ると、廣田先輩が自分の鞄から一冊の本を手渡してきた。
受け取った本をぱらぱらッとめくると、日常を描いた恋愛小説のようだった。
「読んだから、良ければ借りる?」
廣田先輩にそう言われ、小さな声で「有難うございます」と返事をした。
私はそのままお借りした本に目を通しはじめ、気が付くと読み耽りいつの間にか降りる駅のアナウンスが電車内で流れて気が付いた。
「先輩もこういう本を読むんですね?」
電車から降り、会社に向かう途中、私は先ほど借りた本について先輩に尋ねた。
「ん? ああ、俺、妹がいるんだけど読んだ本をどんどん俺に渡してくるんだ。女性ってそういう本が好きなんでしょ? 俺は電車の中でもらった本を暇つぶしに読んでるんだけど」