残念先輩って思われてますよ?

 へー、妹さんがいるんだ……。でも兄に恋愛系の本を渡すってどういうことだろう? なんか不思議……。

 私がそう考えながら歩いていてふと気が付く──。

 あれ? 私、仕事中でもないのに廣田先輩と一緒に歩いてる? これって傍から見たらどう映るの?

 急に頬が熱くなり、体中が火照り始める。

 そんな私の変化に気づかず廣田先輩は、駅近くの映画館の前の路上際に立て看板が出されているのを呟く。


「おっ、これやっと劇場版になったヤツだ……、俺、ネット小説の時代からずっと追いかけてるんだよなー」


 立て看板を見ると、テレビでも何期も続編が出ている有名なアニメで私も原作者の大ファンであることから、シリーズものも含めて全巻持っている。ちなみにこのアニメの主人公をスマホの待ち受けに設定している。

 言いたい──私も熱心なファンであることを……。でもアニメやラノベの話を職場の人に話すのはちょっと気恥ずかしいかも……。

 
「蒼佑せーんぱいっ♪」


 私がモジモジして、自分の思考の海の中に漂っている間に突然、「それ」はやってきた。

 ガシっと並んで歩く私の反対側の先輩の腕を絡めとり、ぎゅっと胸を押し付ける。

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