残念先輩って思われてますよ?

「逢沢さん……なに? ごめん離してくれる?」


 廣田先輩も不意を衝かれ、身じろぎするが抱き留められた腕を剥がすことができない。


「え~、いいじゃないですか~私と蒼佑先輩の仲なんだしっ」

「はっ? 何言ってるの? どういう仲なの俺達──誤解されるから腕を離してよ」

「誰に誤解されるんですぅ? 隣にいる璃子のことですかぁ~? だって璃子は私と先輩のこと『応援してる』って言ってましたよ~?」


 廣田先輩はその話を聞いて私をチラッと見る。

 あれは先々週のこと、逢沢さんが廣田先輩と付き合っちゃうかもと言われたので「応援するね」と確かに答えた。でも……。

 顔を俯けたまま二人より歩くのが自然と速くなる。どちらの顔も今は見ることができない──。

 後ろでは遠ざかって小さくなった逢沢さんの声が「ほらっ蒼佑先輩だから言ったじゃないですか~」と微かに耳に届いた。


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