残念先輩って思われてますよ?

「宗方さん、マニュアルはもちろん大事だけど、もう一歩前に踏み出せるようにしてごらん?」


 廣田先輩はそういうと、私が何かひらめくのかを待ってくれている。

 うーん、一歩前に? マニュアルのチェックポイントを自分で増やすってことかな?

 私は考え辿りついた答えを廣田先輩に提示すると、廣田先輩は「七十点」と得点をつけた。

 ──ちなみに後の三十点はなんだろう。

 私の考えはお見通しなのか先輩が答えを教えてくれる。

 教えてもらったのは「考え方を考える」──え? なにそれとその言葉を聞いた時は正直意味がわからなかったが、どうやら何事も作業をいきなりはじめるのではなく、手をつける前にだいたいの手順を考え検証して取り掛かることらしく「道筋」を先に考えるということらしい。

 今回の場合は、この土地を「誰が売るのか」と「誰向けに売るのか」の二点。

 この土地は、一見してみると好条件に見える。売却額安し、土地の抵当権や複数名義等も入ってなく、法的にも綺麗な土地、土地の形状も接続する道路も日当たり風当り、周囲の状況も現地を当たっても、なんら気になるところがない。

 なのになぜ安くで手放すのか? それは売り手の土地所有者である法人の企業の経営状況が悪化しており資金確保のための「売り急ぎ」で仲介をする私達、不動産業のものは、他条件において、欠陥となり得るものが見つからなければ「買い」でいいと思う。

 でも、たとえ買ったとしても誰がこの土地を買うのか、ちゃんとニーズがあるのかを考えないといけない。先輩の見立てとしては、土地に用途地域状では、高さ制限があり三階建てくらいまでの住居しか認められないため、相手は個人、住居建築用の土地となるが、敷地が広い分、長屋状に分筆して建売住宅としての土地が妥当だろうとのことで、買い手もつくし収益も十分見込めるとの判断だった。
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