残念先輩って思われてますよ?
「でも今の『考え方を考える』は、なにも仕事のことだけでもないんだ……色々と使えるから覚えておくといいよ」
先輩にそう言われ、その内容について一生懸命メモを取っていると「忘れるためにメモを取るならメモなんて取らない方がいい」と言われた。本当に私がこれまで覚えてきたことっていったい何だったんだろう。
私だって要点だけをメモして後で調べるということをしているつもりだが、それすらもビジネスでは生温いと考えてるみたい。一字一句を記憶しなくても必要な情報だけを頭に入力する癖を身に着けるようにしないとのことで、果たして私は先輩の満足する「期待値」に達することができるか甚だ不安である。
こういったノウハウ、暗黙知ってどこにも書いてないしその人の独自のプライド、信念みたいなのも影響しているのだろう。でもそれを模倣して自然に扱えるようになったら……。
やっぱり廣田先輩はすごく見習うべきところが多いと思う。このままいつまでも一緒にペアを組めたらいいのに。
でもそんな私の淡い期待を他所に、お昼の時間が来てしまった──。
廣田先輩は午後にあと二件、外周りをする予定が入っており、私だけ先に会社へと帰社する。
バスと電車を使い、会社に戻るともうお昼が終わろうとしていて、昼食を食べ損なってしまった。
でも──。
先輩とのペア最終日、途中で何度か帰り時間を考えて、もう会社へ戻った方がいいよと言われたけど「最後まで勉強させてください」と頼みこみギリギリまで粘ってみた。
本当にそれだけ? と言われたらその答えは自分でもわからない。