残念先輩って思われてますよ?

(あれ?)


 私の立っている小型売店の前から角を折れたところに数人の男性の声が先ほどから聞こえてはいたが、私や逢沢さんの名前が出てきたので死角になっている位置から顔が出ない様にしながら耳を澄まし、音を拾う。


「いやー、断・然、愛未ちゃんでしょ? 宗方ちゃん……だっけ? あんま愛想ないし、なーんか笑顔が足りないんだよなー」


 今日オリエンテーションで一緒だった男性先輩達だ。そっか──そうだよね。私、無理に笑うことって昔から苦手だから……。


「いやいやお前がそれ言う? お前も営業スマイルもっと磨いて言えよ。まあ、確かに愛想ないなあの子は……。廣田はどう思う?」


 廣田先輩──この人も私のことなんて、気にも留めてないんだろうな……。


「俺は笑顔を無理やり貼り付けている奴よりは無表情にしてる人の方が信頼できる」

「ちょっ、お前、何それ? そんなん大人になれてないだけじゃん」

「まあ、お前らに理解してもらおうとは思ってない。聞かれたから答えたまでだ」

「わかった、廣田、お前は独自の路線を突き進んでくれ。しかし勿体ないよなー、こんなに顔よけりゃ女なんて腐るほど寄ってくるのに、お前のその変に頑固なところで、近づく子皆、ドン引きしてくからなー」

 廣田先輩は「余計なお世話だ」と言い返している間に、ホームの後ろ側に反対方向行きの電車が停車した。

「じゃあな」「ああ」っと挨拶をしている。まずいっ!

 私は慌てて、彼らがいる側のお店の正面側に回り込み、店の中に入り、何食わぬ顔で商品を見ているフリをする。
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