残念先輩って思われてますよ?
「え? 私? うーん、正直どこでもいいかな~、正直、この仕事そもそも私には合ってないし……あっ、でも蒼佑さんがいるから営業部でいいかも!?」
彼女の頭はおそらくほぼ “恋” で埋め尽くされているのだろう。商道徳に悖(もと)るというかそもそも社会人としての意識が欠如している気がするが、そんな人の方がこの世をうまく渡っていけてる気がする。
「それで宗方ちゃんはどこを希望してるの?」
「私は──営業職を希望します。口下手でも引っ込み思案でも頑張ればできると思うから」
「──ふ~ん……、そういう“口実”なんだ~結構、やるね~。私、璃子ちゃんのこと見直した」
(え? なにそれ……口実? 見直した?)
逢沢さんは確かにニコニコと笑っているけど、なぜかその笑顔に不自然さを感じる。
「じゃあ、二人とも営業部に配属されたら仲良しだねっ!」
逢沢さんが明るくそう私に伝えてくる。
うーん、彼女と本当に仲良くなれるのだろうか……。
逢沢さんが席を外し、経理課を離れると他の新人男性は残っているせいか、女性先輩達が言葉を発さないまま私に向かって、やれやれと首を横に振っている。 え? 私なにかしました?
終業のチャイムが鳴る三十分前に私達新入社員はミーティングルームに呼ばれて待機していると、次々に各部長や副社長といった面々がミーティングルームに入って来た。
最後に社長が入ってくると、総務兼人事部長が司会として配属先を通知する会を進行させていく。