残念先輩って思われてますよ?
先輩、挟まれてますよ?
夕方、五週間に渡った実施研修の打ち上げと各異動先での活躍を祈念した壮行会が近くの居酒屋の奥の貸し切り部屋で始まり二時間が経過した。
私は、廣田先輩とは違う男性先輩二人に隣と真向いに座られ、積極的に話しかけられてきて、話を合わせるように努力している。
先輩達が話す内容は野球、競馬、パチスロと、正直私にはあまり興味のないジャンルで、先輩達を立てるように「へ~、そうなんですね~」とか「それでどうしたんですか?」などほぼ相槌を打って難を逃れている。
先輩二人が海外で活躍するの日本人メジャーリーガーの話で思いが噛み合い二人で熱心に語り合い始め、私に一時の余裕が生まれる。
長い座卓の端っこに座っている私に対してその反対の端っこに廣田先輩が座り蓋をするように逢沢さんがずっと廣田先輩にひたすら話しかけている。
ここからだと私の視界に逢沢さんが前に映り込み廣田先輩の表情が見えない。
「それにしても、愛未ちゃん廣田狙いかよ~昨日までそんな素振り見せなかったのに~くそー廣田のヤツ羨ましい」
いつの間にか男性先輩達は野球の話を終え、反対側に座っている二人のことを少し声を潜めて噂し始める。
「愛未ちゃん、なーんか昨日、人事部長に取り入ったって話をさっき聞いたけど、まさかな~いくら何でもそこまではしないよなー」
え? 今の話って……、もし本当なら逢沢さんが営業部に残りたいと希望を出した。それとも……。
私はまたも、今日の午後に経理課で逢沢さんと話していて感じた黒い靄のようなものが心の中でもぞもぞっと動くのを感じた。
「宗方ちゃんは彼氏と気になる人とかいないの?」