残念先輩って思われてますよ?

 もう一人を嗜めている先輩が小さい声で私に伝えている時に一瞬目が横の方に泳いだのを私は見てしまった。

 ──逢沢さん、なんでそんな私を陥れるための嘘を平気ででっち上げることができるの? 自分が良ければ他はどうなってもいいの?

 抑え込んでいた心の黒い靄が三度目にして爆発しそうになる。

 ダメ──証拠も何もない。今、問い質してもシラを切られたうえに「友達だと思ってたのに私を疑うなんて非道い」と逆に被害者ぶられるのが目に見えている。

 廣田先輩という自分が狙っている獲物に私が手を出そうとしたから? なら、なぜ私にさっき笑顔で話しかけられたの? そもそも私は「何もしていない」

 吐き気がこみ上げてくるが我慢する……口の中にイヤなニオイが残る──。
女の子の腹の探り合いなら慣れたものだが、陰湿な嫌がらせはこれまで味わったことがない。


「宗方ちゃん、もっと笑顔を見せてくれないと女の子なんだからさ~、こういうところ気が利かないよね~」


 酔った先輩が私に追い討ちをかけてくる。

 今、私どんな顔をしてるんだろ? ぐちゃぐちゃに混じった感情が噴き出し、視界がぐらぐらと揺れている気がする。


「どうした? 宗方さん大丈夫」


 気づいたら私達のそばに立った状態で廣田先輩が私に声を掛けてきた。

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