残念先輩って思われてますよ?
(やっぱり……)
予想した通り、何人かいたうちのひとりはこちら側に残り、他の人は反対方向行きの電車に乗ったようで、別れたと同時にこちら方面行きの先頭のラインに立っている。
廣田先輩だ。どうしよう? この距離で知らないフリはさすがにちょっと厳しいと思う。
私は、肩掛けの鞄の中でかさ張らない大きさのグミを買い、そのまま手に持ち廣田先輩に勇気を出して声を掛けた。
「あの……お疲れ様です。私、今日入社した宗方璃子です」
私が近づく前に片手でスマホをいじっていた廣田先輩は横から声を掛けた私の方を見る。
「ああ、宗方さん。お疲れ。帰りはコッチなの?」
何の違和感もない……、ごく自然に会話を切り出してきた。
「はい、〇△駅です。──先輩はどちらの駅ですか?」
「俺は■〇駅、こっちは三個先だから俺の勝ち」
「え? 勝負してるんですか私達?」
「ああ、もし空気椅子で我慢比べしたら、俺が長く電車に乗ってるから俺の勝ち」
「いえ、ちょっと意味がわからないです」
「そうだね、今ので『そうですね』って言われなくて良かったよ」
(え? それってどういう意味?)