残念先輩って思われてますよ?
先輩、狙われてますよ?
「宗方ちゃん、さっきの場面はもう少し笑顔みせてねっ」
「はい、すみません」
先輩社員の外回りに付き添って三週間、三人目の先輩に遠回しに注意を受けた。
先週も先々週も、先輩社員さん達は皆同じ。「営業なんだからもっと笑顔を見せないと」と言われ続けている。私は無表情とまでいかない相手の目をしっかり見て、相槌を打ち、声は出さないもの口角を上げ好印象になるよう努めているが、三人の先輩たちは「それでは足りない」と暗に語ってきている。
「……はい」
先輩の業務用のスマホが鳴る。
どうやら急な予定が入ったようで、返事は明るいが顔は私に眉間に皺を寄せた顔をみせている。
「うわ~、外山さんの案件回ってきちゃったよー」
スマホの通話を切るとすぐに愚痴をこぼし始める。
「外山さんは廣田担当なのに、行きたくねー」
どういうことなのかまだ理解が追いつかない。先輩は不思議そうな顔をしている私に気づき事情を説明し始める。
「ああ悪い悪い、外山さんってのはウチの会社の取引先でもかなりお得意様なんだけど、気難しって評判なんだよなー、先輩達もう何人も返り討ちにあってるんだって……、俺も初めて会うから、うわ~やっぱり行きたくねーっ」
そうは言っても会社からのご指名なので、さっそく外山邸へと向かった。