年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「大丈夫ですか? 暑さにやられてしまいました?」

 心配そうに私の顔を覗き込むアルロイさん。彼は本当に心配性っていうか、なんていうか。

「違いますよ。足がしびれちゃっただけです。ご心配なく」

 出来る限り安心させるように笑って訳を話すと、彼はホッとした様子だった。

(って、アルロイさんの時計、今流行のブランドのやつじゃない?)

 先ほどはよく見えなかったけど、間近で見るとやっぱりそうだ。

 実は今、ウィリス王国で流行っているブランドがある。実業家だという男性が一代で築いたブランドで、シンプルなデザインが特徴的。男女問わず身に着けることが出来て、庶民階級に圧倒的な人気を誇っていた。

「それ、今流行ってるやつですか?」

 ついつい尋ねてみると、アルロイさんが時計に視線を落とした。

「あぁ、そうなんですね。父にもらったものなので、よくわからなくて」
「すっごく流行ってて、入手困難だとか言われてますよ」

 そんな大変なものをプレゼントしてくださるなんて、アルロイさんのお父さんはすごい人なんだなぁって。

(私は実の両親の顔なんて知らないけど)

 生まれてすぐに捨てられていた私とマリン。偶然にもリスター家の執事サイラスさんに拾われて、彼の娘として育ててもらった。サイラスさんは私とマリンのことを実の娘のように可愛がってくれた。時に厳しく、時に優しく。たくさん、愛情をくれた。

(だから、私は寂しくない。うん、大丈夫!)

 心の中に生まれた『うらやましいな』という気持ちを振り払った。

 私の家族はリスター家の使用人たちだもの!
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