年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「本当はあの子に寂しいなんて思わせたくないし、心配だってかけたくないの」

 まるで無意識のうちに零れたようなお言葉だった。

「たくさん愛情を注いで、育てたいの。私みたいになってほしくない」

 奥さまはご実家ではいい扱いを受けていらっしゃらなかった。だから、こうおっしゃったんだろう。

「大丈夫ですよ。奥さまの愛情は、リッカルドさまにしっかりと伝わっております」

 じゃないと、リッカルドさまだって奥さまの心配をしないはず。それに、旦那さまと奥さまが大好きだっていうことを全身で表してくれている。

「そうだと、いいのだけど」
「大丈夫です。暗いお話になってしまいましたし、なにか気分転換に別のお話をしましょうか」

 現状寝室からほとんど出られない奥さまは、退屈されてしまわれるだろう。

 そう思うから、私たち侍女やメイドは交代で奥さまとお話をするようにしていた。人と話すことが出来たら、ちょっとくらい気持ちも軽くなるだろうっていう考えだ。

「そうね。最近クレアは変わったことがあった?」

 奥さまの視線が私に注がれる。

 変わったこと、か――。

「最近、新しい庭師の人が来たっていうのは、前にお話ししたと思うのですが」
「えぇ、聞いたわ。どんな人なのか気になっていたの」

 身を乗り出す奥さま。植物が好きな者同士、なにか通じるものがあるんだろうなって。

「私、最近彼とよく関わるんです」

 どうしてアルロイさんのことを話そうと思ったのか。

 このときの私は、自分の変化に気が付いていなかった。
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