年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
伯爵家での日々は、思ったよりも刺激的で勉強になることばかりだった。
先輩の庭師たちは俺のことを可愛がってくれた。もちろん、厳しいことを言われることもあったけど、期待に応えたいという気持ちから俺は先輩たちに食らいついた。
庭師長である師匠いわく、新人に欲しかったのはまだ癖のない未熟な庭師だったそうだ。
『そっちのほうが育てがいがあるんだよ』
まだ癖がない――裏を返せば技術力が未熟な俺。
師匠はそんな俺を「今から吸収できるってことだよ」と笑って励ましてくれた。
だからもっと頑張ろうと思ったとき――俺は彼女を見つけたのだ。
先輩の一人と話し込んでいたのは、橙色の長い髪が特徴的な一人の女性だった。
侍女服を身にまとった彼女は小柄で細い。風が吹いたら飛んでしまうんじゃないかって心配になるほどの人。
彼女は先輩と別れたあと、邸宅のほうへと戻っていった。
「あれ、アルロイ?」
彼女をぼうっと見つめていると、先輩に声をかけられる。俺がハッとして「盗み見ててすみません」と謝ると、先輩は「別に」と言って頬を掻く。