年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「さっきの侍女さんですよね?」

 俺の問いかけに先輩はうなずいてくれた。

「奥さまの専属侍女だよ。うちの奥さまの趣味がガーデニングなんだ。ただ、今ご体調を崩されていてな。さっきの侍女は奥さまの意向を伝えに来たってわけ」

 手に持った紙をひらひらとさせた先輩。

 奥さま、か。

「奥さまも外を出歩くことが好きなお方だし、寝台の上は退屈だろうなぁ」
「先輩はお話されたこと、あるんですか?」
「おう。庭師とは比較的よくお話してくださるよ。そういや、お前が来たときにはすでにご体調を崩されてたな」

 思い出したように先輩がポンっと手をたたいた。だから、俺が奥さまとお話したことがないんだろうって。

「ご体調が安定されたら、一度あいさつに行ってみろよ。あと、さっきの侍女はクレアさんだ。今後、お前とも話すことがあるかもだし、覚えておけ」

 俺の肩をぽんっとたたいた先輩が、足早に立ち去る。

(クレアさん、か)

 遠目から見た彼女を思い出す。先輩と話している表情は真剣なものだった。小柄で愛らしい人。

(いや、俺とはそんな関わることないだろうし)

 首を横に振って自分に言い聞かせる。このときの俺は、本当にそう思っていたのだ。
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