年の差十五の旦那様 外伝②～いつか、それが『愛』になる～

「え、クレアさんとサイラスさんって親子なんですか？」

　俺は大きな声を上げる。目の前のクレアさんは笑っていた。

「はい。とはいっても、血のつながりはないです。戸籍では親子になっているだけですから」

　クレアさんはなんでもない風に言う。彼女の目は寂しそうで自然と胸がぎゅっと締め付けられるかのようだった。

「あまり気持ちのいいお話じゃないですけど、私とマリンは捨て子なんです。生まれてすぐに捨てられて、そこをサイラスさんが拾ってくれたってだけ」

　彼女は笑っているのに、苦しそうだった。

「本来は孤児院に預けられる予定だったらしいんですけど、サイラスさんが自分の娘として育てるって宣言して。ほかの使用人の方々と協力して私とマリンを育ててくれたんです」

　噴水の縁に腰掛けて、クレアさんが空を見上げる。横顔が切なく見えたのは気のせいじゃない。

「サイラスさんのことは大好きだし、育ててくれたことに感謝はしています。……でも、たまにこれでよかったのかなって思うんです」
「どういうことですか？」
「だって、サイラスさんって私とマリンがいるから、結婚しなかったようなものですし。恋人も作らなかったし、いい雰囲気の女性がいてもお断りしていました」

　上手い言葉が浮かばない。黙り込む俺を気に留めることなくクレアさんは続けた。