年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「私たちがいなかったら、サイラスさんには奥さんがいて、実子がいて……って、思っちゃうんです。彼の人生を変えてしまったのが申し訳ないんです」

 彼女は本気で言っているんだろうか?

(そんなわけないだろ。サイラスさんがクレアさんたちを大切に思っているのは、見ていてよくわかる)

 血のつながりなんて大切じゃない。互いを想い合うことが大切なんだ。

 実の両親でも分かり合えないこともある。反対に他人のほうがわかってくれることもある。

 人間ってそういうもんじゃないのだろうか。

「ごめんなさい、辛気臭いお話をしてしまって。私、お仕事に戻りますね」

 立ち上がったクレアさんの手首をつかんだ。彼女が驚いて俺を見上げる。

「サイラスさんは、クレアさんやマリンさんのこと大切に思っていますよ。後悔なんてないはずです」
「……アルロイさん?」
「見ていてわかります。あなたは大切にされている」

 俺の言葉に彼女は一瞬だけ顔を歪めて……笑った。

「ありがとうございます」

 その笑みがあまりにも綺麗で、俺は認めざる終えなかった。

(クレアさんが好きだ)

 もう誤魔化せない。俺は彼女が――クレアさんが好きだ。
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