年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「あっ、やっぱりクレアさんだ」

 男性は私のほうに足早に近づいてくる。

 彼はきつそうな顔立ちをしているけれど、いつも表情がにこやかなので特別恐怖を感じることはない。

 それに、彼はいつだって物腰柔らかで丁寧。私は、それを知っている。

「アルロイさん。……こんにちは」

 一応とばかりに挨拶をすれば、彼――アルロイさんは、くしゃっと表情を崩した。

 何処か子供っぽく見えるその表情に、私の胸がむずむずとする。……なんだろう。弟分、みたいに思えるのかも。

「はい、こんにちは。……ところで、なにか御用ですか?」

 ニコニコと笑ってそう問いかけられて、私は頷く。

 アルロイ・ビヴァリー。彼は最近リスター伯爵家にやって来た新人の庭師。年齢は二十一歳。

 短く切りそろえられた漆黒色の髪の毛。鋭い茶色の目。肌は少し日に焼けていて、背丈は高くて体格はがっしりとしている。

 こういうのを……そう、野性的。そういう風に言うんだと思う。

 そんな彼は、どうしてか私によく声をかけてくれるのだ。

「はい。奥さまからの意向をお伝えに来たのですが……みなさま、出払っているようで」

 アルロイさんは庭師だけれど、見習い。

 だから、あんまり詳しいことは知らないはず。

 まぁ、奥さまがガーデニングを趣味にしていらっしゃること。その奥さまがつわりで寝台から動けないことくらいは、耳に入っているだろうけれど。

「そうなんですか。……じゃあ、俺が伝えておきますよ。それとも、スペースの確認もします?」

 表情を崩さずに、アルロイさんはなんてことない風にそう言う。……話が早くて、ちょっと驚き。
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