年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「師匠たちからいろいろと聞いているんで。この邸宅の情報は、全部頭の中に入っていると思いますよ」

 ……けど、それはちょっと言いすぎ。

 庭師よりも、侍女のほうがずっと邸宅の事情には詳しい。……と、思う。

「さすがにそれは言い過ぎです。私たち侍女のほうが、ずっと詳しく知っています」

 たとえば、ご令息であるリッカルドさまのこと……とか。

 なんて、言い合っても意味なんてないので、私は深くは反論しない。アルロイさんも、そこは知っているらしい。頷くだけだ。

「それは、そうかもですね。女性の情報網は怖い。……身をもって、知っていますよ」

 ……しかし、彼のその言葉の意味が、よくわからない。

 身をもって知っているって、どういうこと、なのだろうか。

(なんて、私が考えたところで意味なんてないわ。私たちは同僚の関係だもの)

 私のほうがずっと前からこのおうちに仕えているけれど、立場は一緒。……いや、私のほうが少し上なのかな?

 と、どうでもいいことを考えていると。アルロイさんは、倉庫からいくつかの道具を取り出して、「行きましょうか」と私に声をかけてくれる。慌てて頷いて、彼の後に続く。

 ……身長があまり高くない私に比べて、彼の身長はとっても高くて。

 なんだか、負けたような気がしたのは、気のせいじゃないだろう。
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