年の差十五の旦那様 外伝②~いつか、それが『愛』になる~
「えぇっと――」

 今日私がチェックするべきは雑草がどれだけ生えているかとか、お花に栄養がいきわたっているかとか。

 スペースを見て回りつつ、エプロンのポケットに入れていたメモ帳を取り出す。庭師の人たちに伝えることをメモしていくためだ。

(虫よけも考えなくちゃならないかも。そろそろ増えてきそう)

 虫よけといっても、たくさん種類があるものねぇ。

 庭師や奥さま曰く、花に栄養を与えてくれる虫もいるっていうし。

 しゃがみこんで、お花の状態を観察する。額に汗がにじみ始めていたとき、そっと影が差してきた。

「クレアさん。あんまり根詰めたらダメですよ」

 顔を上げると、アルロイさんが日傘を持ってきてくれていた。

 私、別にお嬢さまでもなんでもないのに。

「ありがたいんですけど、私っていいところのお嬢さまじゃないんで……」

 だから、必要ない――と伝えようとしたのに、アルロイさんは首を横に振る。

「クレアさんだってレディですよ。お嬢さまとか、関係ないです」

 なんだろう。アルロイさんってこういうところがあるのよね。天然のタラシっていうか。

「私をレディ扱いしても、なにも出てきませんよ」
「なにか見返りを求めているわけではないので、お気になさらず」

 こういう返しをスマートに出来るのも、ポイントが高い。そのポイントがたまったところで、なにがあるのかは知らないけどさ。
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