それは麻薬のような愛だった
「雫!」
母と選んだ振袖に身を包み会場に向かえば、懐かしい友人が何人か居た。
中学以来の子も居れば高校以来の子も居て、懐かしい話に花を咲かせた。
「雫、なんか綺麗になったね!ていうか痩せた?」
「ありがとう。実はこの日の為にダイエットしてたんだよね」
嘘だった。
母にも同じように言われて誤魔化したが、実際は何度も嘔吐を繰り返す内に食が細くなっただけである。
それでも痩せ過ぎとまでならなかったのが不幸中の幸いだ。
もし一線を越えようものなら母が無理矢理にでも家に連れ戻しただろうから。
「そっか〜彼氏でも出来たのかと思ったのに」
「あはは…」
「ていうか、彼氏が出来たのは私なんだけどね〜!」
「あれ?まさかの自慢だった」
当時あまり目立たないと言われていた友人達も、メイクを覚え大人の女性になりみんな美しく成長していた。
何より笑顔が幸せそうにキラキラと輝いていた。
きっと自分は彼女達のような輝く笑顔は一生できないんだろうなと、心の奥底で思う。
少し前の自分だったら塞ぎ込んでいたかもしれない。
けれど気持ちを昇華した今、それについて羨ましいといった感情が沸かなかった。
自分でも嫌になるけれど、きっと一生雫の心は一人の男に囚われたままなのだろう。