それは麻薬のような愛だった
「あ、こっち向いた!視線の破壊力ヤバい!」
「ちょっと落ち着きなよ…」
騒ぐ友人と呆れる友人に囲まれ、雫は伊澄の目をしっかりと捉えていた。
自分に向いているかは不明だがとりあえず笑顔を作り小さく手を振れば、伊澄はすぐに視線を逸らした。
違ってたかな。
そう思っていると会場内に式の開始のアナウンスが流れた。
係の大人に誘導され、その後式が始まった。
式典の最中はテレビで目にするようなトラブルもなく無事に終わった。
その後友人達としばらく話に花を咲かせたが、各々帰る時間が来てしまった為解散することになった。
「雫は同窓会には行かないんだっけ」
「うん。だってみんな不参加でしょ?」
「そー。私大学が地方だし明日講義あるから帰ったらすぐ出なきゃ」
「同じく」
仲のいい子が揃って出席しないとなれば、場違い感が浮き彫りになりそうなので参加は辞めた。
特に出たかった訳でもないし別に良かった。
各々別れを告げてまた遊ぼうねと軽い約束を交わして帰路に着く。
母に迎えに来てもらおうとスマホから連絡を入れて、来た時に降ろしてもらった近くのコンビニに向かおうと足を進めた。
「雫」
背後からかけられた声に、身体が硬直した。
見ずとも分かる聞き慣れた声。
あまり会いたくはなかったけれど無視する訳にもいかないので、ゆっくりと振り返った。
「…いっちゃん、久しぶり」