それは麻薬のような愛だった
にこりと笑うと、相変わらずの無表情がそこにあった。
少し不機嫌そうにも見えたが、伊澄はいつも大抵こんな顔をしているので気にしない事にした。
「元気そうだね。もう帰るの?この後遊びに行く人いるみたいだけど」
「断った。お前は」
「私も友達みんな帰っちゃったから帰るよ。お母さんに連絡したからあそこのコンビニで待とうと思って」
「おばさんには要らなくなったって言え」
「え?」
「俺が送る」
一瞬何を言われたか分からずぽかんとしたが、すぐに意識は戻った。
「送るっていったって…」
「車で来てる」
そう言って伊澄は車のスマートキーを見せてきた。
雫としては遠慮したかったのでそのままを伝えようとしたが、伊澄の背後に見える数多の視線に思わず気圧されてしまいススス…と背後に後ずさった。
「いや…いいよ、悪いし」
他に送って欲しそうな子がそこに沢山居るんだからと分かりやすく伊澄の背後に視線を送ると、伊澄は機嫌悪そうに舌打ちをした。
「話があるんだよ。いいから来い」
どうやらこちらの意見などそもそも聞く気は無かったらしい。
雫は気乗りこそしなかったがついて行かない訳にいかなくなってしまったので、あまり意味はないと知りつつも手で軽く顔を隠しながら伊澄の後に続いて歩いていった。