それは麻薬のような愛だった
これは夢なのだろうかとすら思った。
苦しくて、苦しさのあまり自分の都合の良く作り出した夢じゃないかと。
だってあんなに遠かった。
手を伸ばしても全然心に届く気がしなくて、それならいっそと自暴自棄になって。
それでも好きだった。
心が壊れても、ずっとずっと、好きだった。
許す許さないじゃない。もうそんな次元じゃない。
…それ程までに、この男をあいしてしまったから。
再び涙が流れ、首筋に埋まる伊澄の顔を離してその唇にキスをした。
「…言ってよ、いっちゃん。私、いっちゃんが私のものになってくれたって、思いたいの」
自分からした、初めてのキスだった。
ずっとできなかった。
ただのセフレだって思ってたから。
雫からの初めてのキスは子どものお遊びのように口に軽く触れるだけのものだった。
それだというのに、目の前の伊澄はこれ以上ないというくらい顔を真っ赤にしていた。
次の瞬間には両手で顔を掴まれ深いキスをされる。
快感を与える為の手慣れたものでない、余裕なんて欠片もない獣のようなキスだったけれど、それでも今まで重ねてきたどんな口付けよりも気持ち良くて幸せだった。
「…雫」
離れては触れ、離れては触れを何度も繰り返して長い時間をかけて漸く離れた時に呼ばれた名前は、ひどく甘くて痺れそうだった。