それは麻薬のような愛だった
欲のままに事が終われば、雫はシャワーを浴びたいといって浴室へ消えていった。
「嘘だろ…」
柄にもなくベッドに突っ伏して頭を抱えた。
翻弄するのは自分だったはずだ。
だというのになんだこの体たらくは。
深いため息を吐き脳内を整理する。
まさか自分が、雫を好きだとでもいうのか。そもそも好きってなんだ。
自分に好きだと言ってきた女達を思い浮かべては気色が悪いと吐き捨てた。
自分を好いているのは雫の方だ。
現に結局最後まで抵抗しなかった。
なのに妙に今自分は満たされた気持ちになっている。
こんな事は一度も無かった。
高校時代に雫を抱いていた時でさえ、一度も。
「いっちゃん、起きてる?」
ふとかけられた声に顔を上げれば、バスローブに身を包んだ雫が自分を覗き込んでいた。
「お風呂空いたからいっちゃんも入るかと思って声かけたけど…ごめんね、起こしちゃったかな」
そう言って笑う雫に何か違和感を感じた。
いつもと変わらない笑顔のはずなのに何かが違う。
「…寝る」
だが気付かないフリをした。
これ以上掻き乱されるのは気に障る。
雫もそれ以上は声をかけてはこなかった。
…今思えばこの時にきちんと向き合っていれば、彼女をあそこまで傷つける事はなかったのだろう。