それは麻薬のような愛だった
それから半年後、伊澄は再び地元に戻ってきていた。
自ら望んで帰ってきた訳ではない。
従姉妹の結婚式に参加する為、親族の義務として戻ってきただけだ。
「おめでとう!」
「綺麗だよ!」
「お幸せにー!」
結婚式は本当につまらないもので、異様に時間が長く感じた。
親族席で両親の隣に座りひたすらに時間が過ぎるのを待っていると伯父と伯母、それと新婦の妹にあたるもう一人の従姉妹がテーブルに挨拶に来た。
「今日は来てくれてありがとう」
「こちらこそ。幸せそうな顔が見れて嬉しかったわ」
社交的な母は伯母達と挨拶をしてから会話を弾ませ、いつの間にか話題は新婦の話に移る。
「前の男と別れた時にあまりに落ち込むから、本当にどうなるかと思ったわ」
隣で話しているので否が応でも話が耳に入り、伯母は胸元に手を当てながら安心したようにそう言った。
「あら、そんな酷い男だったの?」
「五年近く付き合って結婚目前って時に急に別れ話切り出されてね。もう大変だったのよ〜」
「あらそう…てまもなんとか立ち直ってくれて良かったわ」
母親がそう言うや否や、傍らに立っていた従姉妹がぐっと身を乗り出して話題に割り込んだ。