それは麻薬のような愛だった




そこに愛がない事など百も承知だった。

それでも別に良いとさえ思った。
伊澄がどう思っていようが彼の事が心から好きだったから。


初めてを好きな人で散らせるなら本望だった。

けれど予想外だったのは、その後。


伊澄曰く雫とは身体の相性が良いらしく、この歪な関係はその後二人が無事に同じ高校に合格して通うようになってからも続いた。



所謂セフレというやつなのだろう。
はっきりと伊澄から明言された訳ではないが、いつも伊澄から求められるのは彼女の居ない時だったから。

彼女がいる間は一切関わりなく、別れたら連絡がきて身体を重ね、また新しい彼女ができると一切の関わりが無くなる。


性欲処理の道具として扱われているなという感覚はあった。
けれど月日を重ねるにつれて次第に雫の感覚も麻痺していった。


昨日体を重ねたのに、翌日になると何事もなかったように隣に彼女を連れて歩く伊澄の姿を何度も目にし、最初は確かに傷ついていたのにいつしか「ああ、またか」くらいにしか感じなくなっていた。


高校卒業を目の前にした今ではもう、伊澄が好きなのかどうかも、分からなくなっていた。








< 7 / 88 >

この作品をシェア

pagetop