それは麻薬のような愛だった
雫への想いを自覚してから、それまでのくだらない縁は全て切った。
ここ半年は誰の相手をする気になれず連絡がきてと無視し続けていた事もあってか、思いの外アッサリと関係は終わった。
それまでの行いを見ていた周りからは天変地異を疑われたが、自業自得だ。
一人の女の為に身も心も、時間も全て投げ打って尽くすことになるなどと誰が予想できただろうか。
連絡の頻度も会う回数も格段に増えた為何か勘付かれるかと思いきや、良くも悪くも雫の態度は変わらなかった。
相も変わらず伊澄からの誘いを拒否する事なく受け入れるが、その目は自分を見ては居なかった。
他の男にも同じなのかと疑い、雫の家に行く際にはその痕跡を探ってはみたが見つけた事は無い。
これ見よがしに私物を置いてみても嫌がる素振りも見せなかった。
雫が何を考えているのか分からない、そんな日々を続けているうちに気付けば大学も卒業を迎え、就職と相成った。
司法修習生のいうのはかなり忙しく、地方への配属もあったがなんとか時間を作って月に一度は必ず雫に会いに行った。
その期間を終えて都内へ戻って来てからも忙しさは変わらない。
時には休日返上する事もあったが、それでも雫の元へ会いに行く事は辞めず、苦でもなかった。
いつの間にか煙草に手をつけるようになった時には驚いた。
自宅で煙草を吸っていた娘を溺愛する父親に向かって「お父さんタバコ臭い、きらい!」などと言って大の大人を四つん這いにさせて涙の海を作らせていた癖に。
そんな月日を過ごして気付けば片想い期間が六年と経っていたある日、いつものように週末に雫へ連絡を入れると、とんでもない返事が返ってきた。
合コンに参加するから会えない、と。