それは麻薬のような愛だった



絞り出した声は酷く掠れていた。

心が壊れるほど追い詰められ傷付いた雫に、これ以上自分は何をしたんだ。


頭の中で言い訳ばかりが浮かぶ。
雫の気持ちを利用して、優しさに甘えてここまで来た。本来なら謝る資格など微塵もない。

それでも、どれだけ罵倒され嫌われようと、側に居られなくなるのだけは嫌だった。




「俺を、捨てないでくれ」


愛して欲しいなどと思わない。

それでも唯一心を満たしてくれる腕の中の温もりを、雫という存在そのものを失いたくなくて必死に縋った。



「そんな事言われても、困るよ。私、いっちゃんの事全然分かんない」


雫はそう言い、テーブルに放置していたスマホを握らせた。


「もう終わりにしよう」


その言葉を聞いた瞬間、視界が真っ暗になった。


狂おしいほど愛しい声で紡がれた拒絶の言葉は、酷く心を抉った。

生きた心地もせず、息の仕方も忘れて立ち竦んでいると雫は予想外の言葉を告げた。


「分かってるよ。私が君の一番になれない事なんて、ずっと知ってる。…だけどね、もう駄目なんだ」


なんだ。何かがおかしい。

拒絶したのは雫なのに、何故そんな事を言うのか意味がわからなかった。




「いっちゃん、好きだよ」





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