それは麻薬のような愛だった
一度目は聞き間違いかと思った。
けれど雫は何度も自分を好きだと言う。
昔も今もずっとだと。
それならどうして終わりにしようだなんて言葉が出てくるんだ。
「もう耐えられないの、いっちゃんが他の人のところに行っちゃうの」
そう言うなり雫は俯いた。
やはり何かがおかしい、話が噛み合っていない。
そう思い伊澄は雫の腕を掴み顔を上げさせた。
穴が開くほど強く睨みながらどういう事かと聞けば、伊澄には他に女がいるんだろうなどとのたまった。
そういうことかと、漸く合点がいった。
雫という女はどこまでも自分の事を卑下して好かれるはずが無いと思い込んでいる。
紛れもなくそうさせたのは伊澄なので何か言えた義理はないが、他に女が居ないという点だけは強く否定した。
証拠を見せつけて納得させれば安心したように肩を落とす雫を見て、伊澄は覚悟を決めた。
抵抗されないのをいい事にその細い腰を抱き、好きだと告げた。
どんな酷い言葉を浴びせられようと、罵倒されて嫌われようと受け入れる、とも。
彼女の側に居られさえすれば、なんだって良かった。
しかし意を決して雫が伝えてきたのは妊娠の話で、分かっていた事なので驚きはしなかった。
そこで他の男との子かと疑わないのかと問われ、何故終わりにしたいと言い出したのか、そこで漸く合点がいった。