それは麻薬のような愛だった
天城は資料から目を離して「どんなって言われてもな…」と頭を掻きながらぼやく。
(因みにこの時奥様関係の話ならちゃんと会話するんだなと思ったのは言うまでもない)
その時丁度エレベーターが目的の階に到着し、ドアが開いたタイミングで天城が短く答えた。
「麻薬みてーな女」
「は?」
意味が分からず思わず聞き返す。
いや麻薬って何、全く意味が分からない。
いやもっとこう他に表現の仕方があるでしょ。
顔が可愛いとか、優しいとか料理上手とか…
それをいうに事欠いて麻薬って…それ、褒め言葉じゃないよね。
「…えっと、好きなんですよね?奥様のこと」
仮面夫婦?存在しないエア奥様?
まさかその指輪は女避けの為のフェイクじゃないよね?
不躾かとは思ったが、先にエレベーターを降りて歩き出した背中に向かって尋ねた。
するとピタリと足を止め、振り返って目にした天城の表情にドクンと胸が強烈な音を立てて体中が熱を帯びた。
「すげー愛してる」
その瞬間、目の前のドアが閉じた。