それは麻薬のような愛だった
それが二年前の出来事。
雫は今日、二十歳の誕生日を迎えていた。
「雫、おめでとう!」
大学生活は思った以上に楽しく、新天地で新たな友達もでき数ヶ月前には初めての彼氏もできた。
今日は雫の誕生日を祝う為に彼氏と外食に来ている。
「ありがとう、嬉しい!」
雫の好きな料理を食べて、初めて飲むお酒もほどほどに楽しんでプレゼントも貰った。
彼氏の颯人はとても穏やかで優しく、自分をとても好きでいてくれた。
きちんと言葉にもしてくれるし、雫もそんな彼が好きだった。
…けれど、雫の壊れてしまった心は戻ってはいなかった。
デートをして、食事を楽しんで颯人の家に一緒に帰宅した。
颯人はとても誠実な男で、これまでキスはすれどもそれ以上の事は無かった。
ゆっくりと時間をかけて本当に大事にしてくれて、そんな誠実なところにとても惹かれていた。
ーーそれなのに。
いざそういう雰囲気になり颯人の手が胸に触れた瞬間、猛烈な吐き気に襲われた。
「ーーっ!」
雫は急いでトイレに駆け込み、胃の中のものを全て吐き出した。