寵愛の姫 Ⅲ【完】
「神無。」
ふわりと撫でられる頭。
隣を見上げれば、朔くんが優しい眼差しで私を見下ろしていた。
「天野先輩と少し話してくるだけだから、神無は先に教室に戻っててよ。」
「っ、でも……。」
出来ないと、朔くんの制服を掴む手に力が入る。
「大丈夫だよ、神無。」
「………。」
「神無?」
朔くんが屈んで、俯く私に目線を合わせた。
「ーーーーーもうすぐ、莉茉さんが来る。」
小さく、私だけに聞こえるように、そっと囁かれる、彼女の事。