寵愛の姫 Ⅲ【完】



「だって、前田を怒らせると鬱陶しいんだよ。」



嫌そうに顔をしかめる大雅は、子供のように分かりやすく、唇を尖らせた。



「……………キモ。」



有り得ないだろ、大の大人が。




そんなキモい大雅に冷めた目を向けてから暴言を吐き、俺は煙草をくわえる。



「え、暁、酷いんだけど。」



「あ?」



「ひっ…。」



しくしくと、うざい泣き真似をする馬鹿を睨み付ける事で黙らせて、昔を懐かしむ。




高等部の頃は、大雅はしょっちゅう下らない遊びをしては叱られてたなぁ。




……………あの、笑顔を浮かべたままの前田に。
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