寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………、水瀬莉茉、です。」
取り敢えず、前田先生の後に名前だけ告げて、私は頭を軽く下げる。
他に何を言えば良いのか分からない。
「「………。」」
落ちる沈黙。
ゆっくりと下げていた顔を上げれば、四方から値踏みされるような視線を感じた。
息苦しさに、目線を落とす。
「水瀬さんの席は、あそこ、窓際の一番後ろです。」
「……はい。」
前田先生に促されて、自分の席に歩みを進めれば、こそこそと聞こえる声。