寵愛の姫 Ⅲ【完】
「………………ねぇ、あの子って、今朝、高崎さんの車から降りて来た人じゃない?」
「確かに、彼女かな?」
「えぇ、私も高崎さんの事が好きなのに!」
残念そうな声に孕む、私に対する増悪の感情。
向けられる瞳の中に、妬みの色が灯るのを、はっきりと見た気がした。
「でも、あの子も一回ヤったら、高崎さんに飽きられて捨てられるんじゃないの?」
ずっと、母や茉莉に向けられていた私が、それが分からないはずもなく。
「っっ、」
くらりと、目の前が歪む。
くすくすと笑う声に、私は無意識にきゅっと、強く手を握り締めていた。