寵愛の姫 Ⅲ【完】
「水瀬さんの席は、あそこ、窓際の一番後ろです。」
莉茉さんに前田先生が指差した先は、私の後ろの席。
偶然、ではなく。
これは、莉茉さんの近くの席になるよう、朔くんが手を回した結果の配置。
簡単に言えば、私の席にいた子に、ただ譲ってもらっただけだけどね。
「……はい。」
前田先生に促された莉茉さんが、自分の席へとゆっくりと一歩を踏み出す。
その瞬間。
ーーーーー悪意は、彼女へと牙を剥いた。